【発展編①】電圧低下で系統電力にチェンジ!「自動切替ロジック(ATS)」の構築

②DIY実践・ベランダ発電システム構築

[第6回]までの連載で、ベランダ太陽光パネルからインバーターまで、一通りのシステムが完成し、実際に家電を動かせるようになりました。

しかし、前回までのシステムのままだと、完全に家から独立した「独立系統(オフグリッド)」のため、どうしても用途が非常用電源や、手動で繋ぎ替えた時だけの限定的な運用になりがちです。

せっかく構築した発電装置です。非常用として眠らせておくのはもったいない!

日常的にガンガン働いてもらい、「家の電気代を少しでも浮かす」ための自動化システムへと進化させましょう。

今回はいよいよ、エンジニアブログの本領発揮となる「自動電源切替ロジック」の構築について解説します!

1. 自動切替の基本ロジック:狙いは「バッテリーファースト」

仕組み自体はとてもシンプルです。

  • 太陽が照っている昼間: 太陽光で発電し、バッテリーの電力(インバーター経由)で家電を動かす。
  • 電気がなくなってきたら: 自動的に電力会社からの電気(系統電力)に切り替える。

これだけです。常に太陽光(バッテリー)を優先して使い、足りなくなったら電力会社の電気をバックアップとして使う。この動きを自動で行うのが「ATS(自動電源切替器)」と呼ばれる仕組みです。

2. エンジニアの罠!「チャタリング現象」を防ぐ閾値(しきい値)の設定

ロジックは簡単ですが、実際にシステムを組む際に絶対にやってはいけない設計ミスがあります。

それは、「切り替える電圧の閾値を1点だけにする」ことです。

例えば、「バッテリー電圧が13.0Vを下回ったら系統電力へ、13.0Vを上回ったらバッテリーへ」という1点のみのルールにしてしまうとどうなるでしょうか?

電気を消費して12.9Vになり系統に切り替わった瞬間、バッテリーは負荷から解放されて電圧がフッと13.1Vあたりまで回復します。するとシステムは「あ、電圧が戻ったからバッテリーに切り替えよう」と判断し、再び放電を始めてまたすぐ電圧が下がる……。

この「カチカチカチカチ!」と高速で切り替えを繰り返してしまう現象を「チャタリング」と呼びます。機器の故障や火災の原因になり、非常に危険です。

これを防ぐために、エンジニアリングでは必ず「ヒステリシス(幅)」を持たせます。

【正しいロジック設定の例】

  • 系統電力への切り替え(放電停止): バッテリー電圧が 13.0V になったら
  • バッテリーへの復帰(放電再開): バッテリー電圧が 13.4V までしっかり回復したら

このように「出口」と「入り口」の電圧に差(今回の例では0.4Vの幅)をつけてあげることで、チャタリングを完全に防ぎ、安定した自動運用が可能になります。

3. リン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO4)の電圧挙動を知る

このロジックを組む上で、私たちが使っている「リン酸鉄リチウムイオン電池(12Vシステム)」の電圧特性を理解しておく必要があります。

おおよその残量(SOC:State of Charge)と電圧の目安を以下の表にまとめました。

リン酸鉄リチウムイオン電池 電圧・残量目安表(12Vシステム)

バッテリー残量 (SOC)12Vシステム電圧 (休止状態)セル1個あたり電圧バッテリーの状態
100%13.4V 以上3.35V 以上満充電(放電を再開して良い状態)
90%13.2V 〜 13.3V3.30V 〜 3.32V高電圧域(安定稼働中)
50%12.8V 〜 13.0V3.20V 〜 3.25V通常動作範囲(この辺りで系統へ切替が理想
20%12.5V 〜 12.6V3.10V 〜 3.15V要充電(これ以上放電すると劣化が進む)
10%12.0V 〜 12.2V3.00V 〜 3.05V急激な電圧低下開始エリア
0%10.0V 以下2.50V 以下放電停止(BMSによる強制保護レベル)

⚠️ 注意事項

  • 上記の数値はあくまで一般的な目安です。バッテリーの個体差やBMSの仕様によって異なる場合がありますので、実際に作業される際は必ず購入された電池の取扱説明書をご確認ください。
  • なお、一般的な**「鉛蓄電池」は全く異なる電圧挙動を示すため、この表の数値は絶対に流用しないでください。**

4. 自動切替システムの全体構成図

「難しそうだな…」と感じるかもしれませんが、全体のシステム構成は驚くほどシンプルです。超簡易的な構成図にまとめると、以下のようなイメージになります。

5. 格安でロジックを実現する「電圧制御リレー回路」

「で、その電圧を監視して自動でスイッチを切り替える回路はどうやって作るの?」と思いますよね。

マイコン(Arduinoやラズベリーパイ)を使って自作するのも楽しいですが、実はそんな面倒なことをしなくても、一発で解決できる優れものの「リレー基板(電圧コントローラー)」が市販されています。

今回の制御ロジックの肝として、私はこちらのリレー回路を使用しています。

用意するものは2つ
一つ目は自動切り替え器です。

こちらは様々種類がありますが、太陽光の絵と系統の絵が描かれている緑色のものを選びます。
電圧は110V 2Pとなっているものを選びます。間違えて220Vを選ばないようにしてください。
これは太陽光側に接続した110V ACに電気が流れているときはそちらを選択し、万が一、太陽光系統が来なくなったら、系統側につながっている方に切り替えるものです。基本はこれをつなぐだけで良いのですが、注意点があります。

このままつなげると、インバーターはバッテリーの容量がゼロになるまで出力を続けてしまいます。そうするとたいていのインバーターは保護回路が働いて、自動的にインバーターの電源を落としてしまいます。つまり、手動で戻してあげない限り二度と自動で太陽光発電からの給電が止まってしまうという状況になります。

それを解決するのが電圧監視リレーです。これを使うことで、インバーターが強制シャットダウンすることなくずっとONのままでいてくれます。

これはまさに、先ほど解説した「〇〇VでOFF、〇〇VでON」というヒステリシス設定がボタン操作だけで簡単にできる超優れものです。これだけの機能がありながら、AliExpressなら数百円〜千円台という圧倒的な安さで購入することができます。

つなぎ方はこんな感じです。バッテリーの電圧を監視しながら、XXV以上になったら太陽光発電につないで、YYV以下になったら系統につないでねという感じの回路が出来上がります。

是非皆さんも試してみてくださいね!

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